2021年1月6日水曜日

伊勢参宮名所図会 古本屋さんで購入 蔀関月さん

 少し前になりますが、今年の夏の前だと思います、古本屋さんで伊勢参宮名所図会の書籍を購入しました。原画版本ではなくて、活字で印刷されています。大正8年に発行された校訂本の複製のようで、昭和62年に印刷発行と書いてあります。伊勢参宮名所図会5巻と付録、拾遺を含めて1冊になっています。挿絵はそのままですが、本文は変体仮名を使用していないので、読みやすくなっています。私は変体仮名を覚えたいという理由から、kindle本の原画版本で読み始めましたが、読めなくて行き詰ったときには参照させて頂いています。それで何とか、読み進められるのです。非常に役に立っています。




比較的新しいので汚れもなく、大判なので挿絵も見やすくて鮮明です。9000円で購入しましたが(定価は12000円)、なかなか良い買い物をしたと嬉しく思っています。
 
本の始めに、校訂者の原田幹という人が例言と題して文章を書いています。その中で、著者 蔀関月(しとみかんげつ)について「書家、画法は月岡雪鼎にまなび一家をなし 筆致和漢を兼ね 頗る人物山水に長ず 著書は本書の他山海名産図会、東海道名所図会12冊 明石須磨名所図会5冊等ありき」と述べています。え、一人でそんなに書いたの⁈ と驚きましたが、調べてみると、山海名産図会や東海道名所図会では挿絵を描いたようです。東海道名所図会では30人の画家が分担して描いているそうですので、蔀関月の著作とは言い難いようです。

 蔀関月という人を検索してみると、大阪で活躍した浮世絵師とでてきます。人物画、山水画でも優れた作品を描き、大阪の久本寺には衾4面の障壁画があるそうです。本業は絵師なのです。さらに詩文書道にも堪能であったという事です。
 また伊勢参宮名所図会については、三重総合博物館のサイトで、「作者は明確ではありませんが、秋里籬島、蓁石田の著述、蔀関月、西村中和の作画と考えられています」とあります。蔀関月は挿絵だけで、記述はしていない可能性もあるようです。でも他では、例えば国立国会図書館デジタルでは、「著書 蔀関月(編・画) 秋里籬島(撰)」となっています。
 挿絵は蔀関月が描いたという事で間違いないようです。挿絵の中の文字と本文の文字は同じように見えるので、本文の文字も蔀関月が書いたかなと思います。そうだとしたら、自分の文章を思いのままにすらすら書いた、というのが自然に思えます。伊勢参宮名所図会の本文は整然と美しく書かれているのではなくて、字が大きかったり小さかったり、ゆったり書いたりびっしり書いたり、一行の文章の途中に二行の説明が挟み込まれていたり、〇や▲などの印もあるし、誌面が視覚的にも面白いのです。読み手を楽しませる書き方で、これは活字になってしまうと判らなくなってしまいます。文面も書き手の気持ちが伝わってくるような面白い所が随所にあります。本の向こうに誰かがいて、色々話してくれているような感じです。その誰かとは蔀関月さんと勝手に妄想していました。
(実際まだ少ししか読んでないので、こんな感想は早すぎかもしれません)

上記の東海道名所図会を書いたのは、秋里籬島という人です。名所図会の先駆者で、他にも多くの名所図会を書いたそうです。俳人でもあり、画工をつれて各地を取材旅行したということです。


 



0 件のコメント:

コメントを投稿